子供の頃、わたしは
ブルボンのルマンドが大好きだった。

あの紫の包みを見るだけで、心が踊る。
しかし問題がひとつあった。
うまく開けれない。
指でシュッと開けるなんて、器用なマネはできない。
いつも歯でガジって開ける。
成功率は5個に1個。
ほぼ惨敗である。
しかも私は、なぜか無意識にギュッと握るクセがあった。
開けた頃には、ほぼ粉。
もはやルマンドではない。
ルマンドの残骸である。
ある日、友達の家で遊んでいると、
おやつにルマンドが出てきた。
やったー。イヤ、ちょっと…
私は下を向き、首を横に振る。
「嫌いなの?」
「好き…だけど、うまく食べられないから」
なんて情けない理由。
しかもその家はダイニングテーブル。
うちは座卓。
緊張しちゃう。
ダイニングテーブルで歯を使うのは、恥ずかしい。
小学一年生にもプライドはある。
指で開けようと挑戦する。
開かない。
焦る。
握る。
粉。
友達はきれいに食べている。
なぜだ。どういう指をしているのだ。
私は小さな穴から粉を吸い込むように食べた。
もはや食事ではない。作業のよう。
あの日、私は心に誓った。
「いつかルマンドを、きれいに開ける」と。
それから指先を鍛えたかどうかは覚えていないが、
気づけば普通に開けられるようになっていた。
今でもルマンドは好き。
でも甘すぎて1本で十分。
1本食べるたびに思い出す。
ダイニングテーブルの上の、
あの紫色のぐちゃぐちゃになった袋を。
今なら、ちゃんと開けられる。十分大人だからね。
ここまで読んいただきありがとうございます。